トレンドの方向性をより滑らかに捉えたい方に注目されているのが「T3インジケーター」です。一般的な移動平均よりもノイズを抑えて表示されるため、視認性に優れ、相場の流れを的確に判断する補助ツールとして活用されています。
この記事では、MT4で利用できるT3インジケーターの概要、設定方法、使い方、そしてMQL4コードの仕組みまで詳しく解説します。裁量トレードの補助として、またはシステムトレードの構成要素としてT3を活用したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
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【T3インジケーターをダウンロードする方法】

- MT4を起動し、画面上部メニューから「ツール」→「MetaQuotesマーケット」を開きます。
- 「マーケット」タブで「T3 2Lines」と検索します。
- 表示されたT3 2Linesを選択し、「ダウンロード」ボタンをクリック。
- 自動的にMT4の「ナビゲーター」内にインジケーターが追加されます。
- そのままチャートへドラッグ&ドロップすれば、T3 2Linesが表示されます。
T3インジケーターとは?滑らかな移動平均の正体を解説

T3インジケーターは、「ノイズの少ない滑らかなライン表示」に特化したテクニカル指標です。一般的な移動平均(SMAやEMA)と異なり、価格の波をできるだけなめらかに追従しながらも、トレンドの反転には適度な反応を見せるという特徴があります。
視覚的なわかりやすさと実用性を兼ね備えており、裁量トレードやEAにおいても「過剰な反応を抑えたトレンド判断補助ツール」として広く活用されています。
T3はどんな指標か?EMAよりも滑らかなライン
T3は「Triple Exponential Moving Average(3重指数平滑移動平均)」とも呼ばれ、その名の通り、複数段階の指数平滑移動平均(EMA)を重ねて計算される特殊な移動平均です。
一般的なEMAは、価格の急激な変動に敏感でノイズが多くなる傾向がありますが、T3はそれらの揺れを抑え、滑らかでストレスの少ないラインを描画します。そのため、トレンドの大きな流れや反転を把握したい場面で重宝されます。
T3は以下のような場面で特に効果を発揮します:
- ノイズを減らしてトレンドの方向を明確にしたいとき
- EMAではダマシが多すぎて困っているとき
- 長期・中期のトレンドラインとして信頼性の高い指標を使いたいとき
開発者 John F. Ehlers の背景とT3の目的
T3を開発したのは、米国のエンジニアであり金融アナリストでもある**John F. Ehlers(ジョン・F・エーラーズ)**氏です。彼は、電子工学やデジタル信号処理の知識をテクニカル分析に応用することで、より精度の高いトレード指標の開発に貢献してきました。
Ehlers氏の開発思想の根底には、「テクニカル分析にも科学的な根拠を」という信念があります。T3もその一環として生まれた指標であり、従来の移動平均に比べて、
- より滑らか
- よりレスポンシブ(反応性が高い)
- よりノイズを抑えた
という3つの特徴を同時に実現することを目的としています。
T3の計算式と平滑化ロジック
T3インジケーターは以下のような階層的なEMA構造をもとに計算されます。
T3(i) = c1 * e6(i) + c2 * e5(i) + c3 * e4(i) + c4 * e3(i)
ここで:
- e1〜e6:段階的に平滑化されたEMA(1段階目〜6段階目)
- c1〜c4:スムージング係数(bに基づいて計算される)
スムージング係数b
(通常は0.7程度)によって、T3ラインの滑らかさが制御されます。bの値を上げるとラインはより滑らかになりますが、反応が遅くなり、逆に下げると価格に敏感になりますがノイズも増えます。
このように、T3はシンプルな移動平均とは異なり、複雑なフィルター処理を通じて価格変動の「本質的な流れ」を抽出しようとする指標です。
T3インジケーターの使い方と活用シーン
T3インジケーターは、移動平均系の中でも特に滑らかでノイズが少ないため、トレンドの判断補助やシグナルのフィルターとして広く利用されています。
ここでは、裁量トレードにおける代表的な3つの使い方をご紹介します。
トレンドの方向性を視覚的に捉える
T3ラインの傾きや流れを見ることで、現在の相場が上昇トレンドか下降トレンドかを直感的に判断できます。
- 上昇トレンド: T3ラインが右肩上がりで推移している場合、価格は全体的に上昇傾向。
- 下降トレンド: T3ラインが右肩下がりになっている場合、下降トレンドと判断できます。
- 横ばいレンジ: T3ラインがフラットで価格の上下を繰り返している場合、方向性のない相場と見なされます。
通常のEMAと違って、短期的なノイズに過敏に反応しないため、全体の流れを把握しやすいのが特徴です。
エントリーとエグジットの補助に
T3インジケーター単体でエントリー・エグジットを行うのではなく、補助的な判断材料として活用するのが効果的です。
エントリー補助:
- トレンドフォロー型:価格がT3の上で推移しており、T3ラインが上昇しているときに「押し目買い」を狙う。
- 戻り売り型:価格がT3の下で推移し、T3ラインが下降しているときに「戻り売り」を検討する。
エグジット補助:
- T3がフラットになったり、反転の兆候が見え始めたタイミングでポジションを手仕舞い。
- 他のインジケーター(RSIやボリンジャーバンド)と組み合わせてT3の変化を利確のトリガーとする。
特に感情に左右されやすい損切りや利確の判断において、T3の滑らかなラインが冷静な判断を助けてくれます。
T3クロスや価格との位置関係での応用例
T3インジケーターを単線として使うだけでなく、「価格」とのクロスや「複数のT3」を組み合わせることで、より高度な活用が可能になります。
価格とのクロス:
- ゴールデンクロス(買い): 価格がT3を下から上に抜けると、上昇トレンドへの転換の兆し。
- デッドクロス(売り): 価格がT3を上から下に抜けると、下降トレンド開始の可能性。
複数T3によるクロス:
- 短期T3と長期T3を表示し、短期が長期を上抜けたら「買い」、下抜けたら「売り」といった戦略に応用できます。
- 例:期間20と80のT3を併用し、トレンドの発生と継続を二段階で確認する。
こうしたクロス手法は、トレンドの発生タイミングを捉えたいトレーダーに特に人気の使い方です。
T3の設定方法とおすすめパラメーター
T3インジケーターを効果的に活用するには、パラメーターの意味と調整方法を理解することが重要です。ここでは、最も基本となる「期間」と「スムージング係数」の意味と設定例を解説したうえで、複数のT3を組み合わせる実践的な活用法も紹介します。

期間(T3Period)の意味と調整例
T3Periodとは、移動平均の計算に用いるベースとなる価格データの本数を意味します。これは一般的なSMAやEMAと同じで、T3も以下のような特徴を持ちます:
- 短期(例:14以下): 価格変動に敏感で反応が速い。短期売買向け。
- 中期(例:30〜50): 適度に滑らかで中長期トレンドの識別に使いやすい。
- 長期(例:100以上): ノイズが非常に少なく、相場の大きな流れを把握するのに適している。
設定例(トレードスタイル別)
トレードタイプ | おすすめT3Period |
---|---|
スキャルピング | 7〜14 |
デイトレード | 20〜50 |
スイング | 80〜200 |
市場環境や時間足にもよりますが、「14」「50」「200」などの区切りの良い数値から試していくのがおすすめです。
スムージング係数(b)の役割と推奨値
スムージング係数(b
)は、T3の滑らかさに直接関係するフィルタリングの強度を決定するパラメーターです。bの値は 0.0〜1.0 の範囲で設定可能で、以下のような効果があります:
- 高めの値(例:0.8〜0.9): 非常に滑らかなラインを生成し、ノイズ除去に強い。だが反応は遅め。
- 低めの値(例:0.5〜0.6): ラインは価格に敏感になるが、ダマシが増える可能性あり。
- 中間の値(例:0.7): 滑らかさと反応速度のバランスが良く、最も一般的に使われる設定。
推奨値まとめ
スムージング係数(b) | 特徴 |
---|---|
0.5〜0.6 | 価格に敏感、短期向け |
0.7(標準) | バランス重視、万能型 |
0.8〜0.9 | ノイズ排除、トレンド重視 |
複数のT3を組み合わせた分析法(短中長)
T3は1本だけでも使えますが、複数本を組み合わせることでトレンドの全体像をより多角的に把握することができます。特に、短期・中期・長期という3つの時間軸で構成する「マルチT3分析」は多くのトレーダーに支持されています。
代表的な3本構成例(5分足に表示する場合)
種類 | T3Period | 想定する時間軸 |
---|---|---|
短期 | 20 | 現在の5分足トレンド |
中期 | 120 | 30分〜1時間の流れ |
長期 | 960 | 日足に相当する流れ |
このように複数のT3ラインを重ねて表示することで、短期の変動に引っ張られず、「今は長期と逆行しているか?」「短期も中期も同じ方向か?」といった判断がしやすくなります。
応用ポイント
- すべてのラインが同じ方向に揃ったときは「トレンドが強い」と判断
- 短期が長期に逆らっているときは「調整局面」や「逆張りに注意」
T3インジケーターの導入方法(ダウンロードとインストール)
T3 2Linesインジケーターは、MT4標準の「MetaQuotesマーケット」から簡単にダウンロードできます。外部ファイルの導入や複雑な設定は不要で、数ステップでインストール完了。初心者の方でも安心して使い始めることができます。
ステップ1|MT4を起動しマーケットを開く
まずMT4を起動し、画面上部メニューから
**「ツール」→「MetaQuotes マーケット」**を選択します。
または、画面下部の「ターミナル」ウィンドウから「マーケット」タブをクリックしても開けます。

ステップ2|「T3 2Lines」で検索
マーケットが表示されたら、**検索窓に「T3 2Lines」と入力します。
該当のインジケーターが表示されるので、「T3 2Lines」**を選択してください。
ステップ3|インジケーターをダウンロード
選択したT3 2Linesの詳細画面で、「ダウンロード」ボタンをクリック。
ダウンロードが完了すると、自動的にインジケーターがMT4に登録されます。
ステップ4|チャートに反映
MT4左側の「ナビゲーター」ウィンドウを開くと、
「インディケーター」→「Market」フォルダ内にT3 2Linesが追加されています。
あとは、任意のチャートにドラッグ&ドロップするだけで、T3 2Linesが表示されます。
T3インジケーターのメリット・デメリット
T3インジケーターは、移動平均系の中でも特に滑らかなラインを描くことで知られており、ノイズを抑えつつトレンドを把握しやすくするテクニカル指標です。しかし、すべてのトレーダーに万能というわけではありません。ここでは、T3インジケーターを実際のトレードに活用するうえでの「長所」と「短所」を客観的に整理し、他の移動平均(EMA、DEMA、HMA)との違いにも触れながら、その特性を明確に解説します。T3を使うべきかどうか迷っている方は、まずこの比較を参考にしてみてください。
メリット|ノイズが少なくトレンドが見やすい
T3インジケーターの最大の特徴は、移動平均よりも滑らかで、ノイズが少ないラインを描く点です。特に以下のようなメリットがあります:
- 価格のブレやヒゲを吸収し、なめらかな曲線でトレンドを視覚化できる
- レンジ相場でもだましにくい傾向があり、見た目の判断がしやすい
- EMAよりもスムーズな動きで中期~長期のトレンドフォローに適している
これにより、「ラインがガタつかない移動平均線がほしい」と感じていたトレーダーには非常に相性が良いインジケーターです。
デメリット|反応が遅れがちになる場面も
反面、T3は滑らかさを優先する構造上、価格の変化に対する反応がやや遅れる傾向があります。
- トレンド転換の初動にワンテンポ遅れて追随する
- スキャルピングなどの短期トレードでは不利になる可能性もある
- 逆行のシグナルが現れた際のエグジット判断が遅れることもある
こうした遅延は、短期トレードのタイミング精度を重視するスタイルにはやや不向きです。
他の平均線(EMA、DEMA、HMA)との違い

指標名 | 特徴 | T3との違い |
---|---|---|
EMA(指数移動平均) | 最新価格に重みを置いた滑らかな移動平均 | T3よりも反応が速いがノイズも多い |
DEMA(二重EMA) | EMAの遅延を補正した指標 | 反応は速いが滑らかさではT3に劣る |
HMA(ハル移動平均) | 反応が非常に速くなめらか | T3より滑らかだが、過敏すぎることもある |
T3は「中間的な滑らかさと応答性」を持ち、トレンドの全体像を把握したいトレーダーに向いている移動平均と言えるでしょう。
注意:どのインジケーターにも一長一短があります。T3も単体での売買判断ではなく、他の指標(価格アクション・ボリューム・トレンド判定)との併用が推奨されます。適切なパラメーター設定とトレードスタイルの整合性が重要です。
T3を使った実践的なトレード例
T3インジケーターは、その滑らかなラインと視認性の高さから、実戦トレードでも多くの場面で役立ちます。特に複数のT3ラインを異なる期間で組み合わせることで、マルチタイムフレーム分析に応用でき、より精度の高いトレンド判断やエントリーのタイミング把握が可能になります。このパートでは、実際のチャートにおけるT3の活用例として、5分足チャートに短期・中期・長期のT3を重ねて順張り判断に役立てる方法や、裁量トレードと併用する際の注意点について詳しく紹介します。
5分足に3本のT3を使ったマルチフレーム分析

T3インジケーターは、異なる期間設定で複数表示することで、マルチタイムフレーム分析に近い環境認識を1つのチャート上で実現できます。
たとえば、5分足チャートに以下の3本のT3を重ねるケースを考えてみましょう:
- 短期:T3期間20(5分足ベース)
- 中期:T3期間120(約30分足相当)
- 長期:T3期間960(約4時間足相当)
この設定により、現在の短期的なプライスアクションだけでなく、上位時間足のトレンド方向も同時に視認できるため、無駄な逆張りや逆行トレードを避けやすくなります。
たとえば3本すべてが上昇している場面では、強い上昇トレンドが継続していると判断でき、押し目買いの好機を探ることが可能です。
順張りトレードの補助としての利用
T3インジケーターは、ノイズを抑えたトレンドラインとして機能するため、順張りトレードの補助ツールとして非常に有効です。
たとえば、短期T3が中期T3を上抜けした場面では、短期的なトレンドが中期的な流れに追随するタイミングと判断できます。これを「ゴールデンクロス」のように捉え、エントリータイミングの参考とすることができます。
また、T3ラインと価格の乖離が大きくなりすぎた場合には、エントリーを控えるなど、過熱感の判断材料としても使えます。ラインの傾きやT3同士のクロスの角度などを見て、トレンドの強さや継続性を推測するのがコツです。
裁量判断と併用する際のポイント
T3インジケーターはあくまでトレンドを視覚化する補助ツールであり、完全な自動シグナルではありません。そのため、裁量判断と併用することで真価を発揮します。
具体的には以下のようなポイントを意識すると効果的です:
- ラインの傾きとローソク足のパターンを組み合わせる:T3が上昇中で、陽線の包み足や押し目のピンバーが出たらエントリーを検討。
- 他のインジケーターと組み合わせる:たとえばRSIやストキャスティクスと組み合わせて、T3が上昇していても買われすぎシグナルが出ていれば見送るといった判断も重要です。
- レンジ相場での過信は禁物:T3はトレンドフォロー向きの指標です。レンジ局面では遅行性やダマシが出やすくなるため、相場環境の見極めがカギとなります。
このように、T3の滑らかさを活かしつつ、他の要素と併用して相場に柔軟に対応することで、勝率とリスクリワードの向上が期待できます。
よくある質問(FAQ)
- T3インジケーターは無料で使えますか?
-
はい、T3インジケーター「T3 2Lines」は無料で提供されています。MetaTrader4(MT4)の「マーケット」からインストールするだけで、すぐに使い始めることができます。
- T3と一般的な移動平均(MA、EMAなど)の違いは何ですか?
-
T3は通常の移動平均よりも滑らかでノイズが少ないのが特徴です。John Ehlersが開発したロジックにより、反応の速さと滑らかさをバランス良く両立しており、トレンドの把握がしやすくなります。
- T3のパラメーター設定で迷ったときはどうすればいいですか?
-
初期設定のままでも十分に機能しますが、以下のような使い分けがおすすめです:
- 短期:20
- 中期:80〜120
- 長期:200〜960
複数本を組み合わせることで、マルチタイムフレーム的な視点での分析も可能になります。
- どの通貨ペアや時間足で使うのが効果的ですか?
-
T3はすべての通貨ペア・時間足に対応しています。特に、トレンドが発生しやすい通貨ペア(USDJPY、GBPUSDなど)や中長期時間足(1時間足~4時間足)で有効性を発揮します。
- レンジ相場では機能しますか?
-
T3はトレンドフォロー向けのインジケーターです。レンジ相場ではクロスや傾きのシグナルが機能しにくくなるため、RSIやボリンジャーバンドなどと併用し、相場環境をしっかり見極めることが重要です。
- EA(自動売買)での使用もできますか?
-
はい、T3インジケーターのロジックはMQL4で実装されており、EAへの組み込みも可能です。独自のアルゴリズムで滑らかなトレンド判断をしたい場合に適しています。
まとめ|T3でトレンドを視覚化し、無駄なエントリーを減らそう
T3インジケーターは、ノイズを抑えて滑らかにトレンドを描き出す高精度な移動平均です。一般的な移動平均線と比べて、過剰なシグナルに惑わされず、本質的なトレンドを視覚的に捉えることができる点が大きな強みです。
複数のT3ラインを組み合わせることで、マルチタイムフレーム的な視点が得られ、トレンドの初動・中盤・終盤の見極めがしやすくなります。また、クロスや傾き、価格との位置関係を活用すれば、エントリーやイグジットの精度も向上します。
一方で、滑らかさゆえに反応がやや遅れる場面もあるため、他のテクニカル指標や裁量判断と併用することが重要です。
T3を導入することで、トレンド相場での勝率アップと、レンジ相場での無駄なエントリーの抑制につながります。シンプルながら応用範囲の広いインジケーターとして、ぜひあなたのトレードに取り入れてみてください。