EA(自動売買)は、設定して放置できる反面、「どんな失敗パターンで破綻するのか」を知らないまま動かすと、一撃で資金を失うことがあります。特にマーチンゲールやグリッド(トラリピ型)のように、平常時は勝ちやすく見えても、相場急変・トレンド継続・スプレッド拡大など“想定外”が来た瞬間にリスクが爆発しやすい手法は要注意です。
この記事では、EAが破綻する典型パターンを具体例ベースで整理し、マーチン・グリッドの危険性を「なぜそうなるのか」まで噛み砕いて解説します。さらに、DD(最大ドローダウン)や破産確率といった指標の見方、稼働停止ルール・ロット上限・相関分散など、初心者でも今日から実践できる“事故を防ぐ運用ルール”もまとめました。
なおTOKYO-EA内の関連ガイド(EAの基礎、MT4設定・トラブル対策、スプレッド実測データなど)にも内部リンクしながら、リスクを体系的に理解できる構成にしています。安全にEA運用を続けるために、まずは「破綻の起点」を一緒に潰していきましょう。
EAの基礎から確認したい方へ|「EAとは?」の仕組み・メリット・注意点
この記事では、EAが破綻する典型パターンと、事故を防ぐ運用ルールを中心に解説します。
一方で「そもそもEAってどう動くの?」「メリット・デメリットは?」「MT4で何を設定すればいい?」という前提があいまいだと、リスクの話が少し難しく感じるかもしれません。
初心者の方は、先に 「EAとは?仕組み・メリット・デメリット・注意点を初心者向けに解説」 で全体像を押さえてから読むと、理解が一気にラクになります。
結論|EAは「仕組み」と「資金管理」を理解すればリスクは減らせる
EA(自動売買)は、相場を“当てる力”よりも「負け方の設計(=資金管理)」で安全性が大きく変わります。
なぜなら、相場は必ず想定外の動きをしますが、**破綻するEAの多くは“想定外が来た時に耐える仕組みがない”**からです。
特に注意したいのが、マーチンゲールやグリッドのように、平常時は勝率が高く見えやすいタイプです。
こうしたEAは「小さく勝ち続ける代わりに、いつか大きく負ける」構造になりやすく、運用者が危険に気づいた時には、すでに含み損やロットが膨らんでいることも珍しくありません。
この記事でお伝えしたい結論はシンプルです。
EAは“戦略の良し悪し”だけで判断しない 破綻パターン(負け方)を先に知る ロット上限・停止ルール・相関分散など「運用ルール」で事故を防ぐ
この3つを押さえるだけで、EA運用のリスクは現実的にコントロールできます。
次の章から、まずは「危ないEAに共通する特徴」と「典型的な破綻パターン」を具体的に解説していきます。
EAのリスク全体像|破綻リスクは“戦略”より“運用”で増える
EAのリスクというと「その手法が危ないかどうか」ばかりが注目されがちですが、実際は 同じEAでも運用次第で安全性がまったく変わります。
極端な話、優秀なEAでもロットを上げすぎれば破綻に近づきますし、逆にリスクの高いロジックでも停止ルールや上限を設ければ致命傷を避けられるケースがあります。
ここではまず、EA運用で起こるリスクを俯瞰し、「どこで破綻が起きるのか」を全体マップとして整理します。
EAのリスクは大きく5種類(相場・ロジック・執行・ブローカー・運用者)

EAのリスクは、主に次の5つに分けて考えると整理しやすいです。
- 相場リスク:急変動、トレンド継続、レンジ崩壊、指標・窓・フラッシュクラッシュなど
- ロジックリスク:損切りが弱い/出口がない/過剰最適化/特定相場に依存しすぎ
- 執行リスク:スリッページ、約定遅延、リクオート、ストップ狩りではなく“実際の滑り”
- ブローカー環境リスク:スプレッド拡大、取引条件変更、サーバー不調、銘柄仕様差(桁数・最小ロット等)
- 運用者リスク:ロット過大、複数EAの相関集中、VPSやMT4設定ミス、止めどき不明
このうち、相場リスクとブローカー環境は完全には制御できません。
だからこそ、残りの ロジックの見極め と 運用ルールの設計 が重要になります。
バックテストが良くても破綻する理由(再現性の崩れポイント)
バックテストで成績が良いのに、本番で崩れるのは珍しくありません。理由は「相場が変わった」だけではなく、再現性が崩れる要因が複数あるからです。
代表的な崩れポイントは次の通りです。
- スプレッド条件が違う:テストは固定、リアルは拡大する(特に指標・市場切替)
- 約定が違う:滑りや遅延で、損切り・利確の価格がズレる
- データ品質が違う:モデル品質・ティック再現・ヒストリの欠損で結果が変わる
- 最適化の罠:特定期間にだけ合う“当てはめ”で、将来に弱い
- 想定外イベント:窓・急騰急落・連続トレンドなど、頻度は低いが致命傷になる局面
つまり、バックテストは「可能性」を見るのには有効ですが、安全性(破綻しにくさ)を保証するものではないという前提で扱う必要があります。
次の章では、ここまでの全体像を踏まえたうえで、実際にEAが破綻する“典型パターン”を具体的に7つに分けて解説します。
EAが破綻する典型パターン7選(失敗の型を先に知る)
EA運用でいちばん強い防御は、「負け方の型」を先に知っておくことです。
破綻は“突然の事故”に見えて、実は 同じ原因が何度も繰り返されています。
ここでは、TOKYO-EAで検証記事やトラブル記事と相性が良い形で、破綻につながりやすい代表パターンを7つに整理します。あなたが運用している(または検討中の)EAが、どのパターンに弱いかをチェックしながら読んでください。
1) レンジ前提なのにトレンドで焼かれる(逆張り系の破綻)
逆張りEAはレンジでは強く見えます。
しかし「いつか戻る」前提で含み損を抱える設計だと、トレンドが想定より長く続いた瞬間に詰みます。
- 戻りが来る前に証拠金が尽きる
- 損切りが浅いと“損切り貧乏”、深いと“破綻一直線”になりやすい
- 勝率が高いほど危険に気づきにくい
逆張りEAは、“勝ちやすい=安全”ではないが鉄則です。
【逆張りEAを徹底検証】無料EA14本を比較|勝率・PF・DDでわかった真実
2) ナンピン・含み損放置でロットが膨張(雪だるま化)
含み損を抱えた状態で追加エントリーを繰り返すと、リスクは階段ではなく“加速度的”に増えます。
特にマーチン(負けるほどロット増)や、グリッド(一定間隔で追加)が絡むと、見た目以上に危険です。
- 含み損が増える
- 証拠金維持率が下がる
- 追加入りがさらにリスクを上げる
- 反発が来ても、戻りが足りずに助からない
破綻の本質は「連敗」ではなく、**想定外の値幅(トレンド継続・急変動)**です。
3) 指標・窓・急変動で想定外の滑りが起きる
重要指標、週明けの窓、急騰急落局面では、EAが正しい指示を出しても「その価格で約定しない」ことがあります。
損切りを置いていても、滑って想定より大きく負けることがあるのが怖い点です。
- ストップが飛ぶ(想定価格で決済できない)
- 利確も滑って期待より小さくなる
- “たまたま一回”が致命傷になる
特に短期足(M1〜M5)や、スプレッド影響が大きい銘柄ほど要注意です。
4) スプレッド拡大・約定拒否で損切りが遅れる
スプレッドが広がると、EAは「入らない」「切れない」「不利な価格で入る」が起きやすくなります。
この問題はロジックの良し悪し以前に、取引環境で発生します。
- MaxSpread制限がない → 事故エントリーが増える
- 損切りが通りにくい → 想定より大きな損失になる
- スキャル系は特に影響が大きい
雇用統計時のスプレッドを徹底比較|海外FX6社を1分単位で実測
5) 過剰最適化(カーブフィット)で本番が別物になる
バックテストを“綺麗にする”ことはできます。
しかしパラメータをいじりすぎると、過去にだけ合う「当てはめ最適解」になり、本番で機能しないEAが出来上がります。
- 特定の期間にだけ異常に強い
- 条件を少し変えると成績が崩れる
- 取引回数が少ないのにPFが高い
見た目の成績より、再現性が重要です。
6) 複数EAの相関で“同時に負ける”(分散のつもりが集中)
複数EAを動かしていても、同じ方向・同じ通貨・同じ時間帯に偏ると、実質「一点集中」になります。
相場急変時に同時被弾し、想定より大きく資金が減るパターンです。
- 同じUSD絡みだらけ
- 同じロンドン時間に集中
- 似たロジック(逆張り系)を複数稼働
分散は“本数”ではなく、相関を減らす設計が必要です。
7) VPS/回線/MT4設定ミスで“止まって負ける”
意外に多いのが「EAの性能以前の事故」です。
EAが止まったまま含み損が膨らむ、決済できない、注文が出ないなど、運用の土台で負けるケースです。
- 自動売買がオフ
- DLL/外部通信が拒否
- VPSや回線が落ちる
- MT4がフリーズ、再起動で設定が戻る
こういう事故は、事前チェックでかなり防げます。
MT4/MT5公式「MetaTrader VPS」の使い方と料金|MQL5 VPSでEAを24時間稼働
マーチンゲールの危険性|なぜ“いつか必ず苦しくなる”と言われるのか
マーチンゲール(マーチン)は、負けたら次のロットを増やして、勝ったときに「それまでの損失+利益」をまとめて回収する考え方です。
短期的には勝ちが続きやすく、見た目の成績(勝率)が良く見えることもあります。しかしその裏側では、負けが続いたときにリスクが急激に膨らむ構造を持っています。
ここでは、マーチンが危険視される理由を「仕組み → 破綻トリガー → 見抜くチェック項目」の順に整理します。
マーチンの仕組み(負けるほどロット増)を1分で理解
マーチンはシンプルに言うと、次のような動きです。
- 1回目:0.01 lot(負け)
- 2回目:0.02 lot(負け)
- 3回目:0.04 lot(負け)
- 4回目:0.08 lot(勝てば一気に回収…)
「どこかで1回勝てば取り返せる」ように見えますが、問題は負けが続くほど必要ロットが指数的に増えることです。
ロットが増える=必要証拠金が増える=含み損の増え方も大きくなるため、一定回数の連敗(または想定以上の値幅)で口座が一気に苦しくなります。
破綻トリガーは「連敗」ではなく「想定外の値幅」
マーチンが崩れる引き金は「連敗そのもの」ではなく、たいてい次のどちらかです。
- 想定以上にトレンドが続いた(逆張り×マーチンで起きやすい)
- 急変動・窓・指標で一気に飛んだ(損切りが間に合わない/滑る)
つまり、マーチンの本質的な弱点は
**“通常時の勝ちやすさ”と引き換えに、“異常時の損失が大きすぎる”**ことです。
特に危ないのは、勝率が高く見えるタイプです。
勝率が高いほど「大丈夫そう」に見えますが、裏側では損失が積み上がり、いざ大きな負けが来たときに回復不能になる――このパターンが典型です。
勝率が高いほど危険に見えにくい(心理トラップ)
マーチン系EAは、次の理由で危険が見えにくい傾向があります。
- 小さな勝ちが続き、右肩上がりに見える
- 負けはたまにしか出ない(しかし出ると大きい)
- DDが増え始めても「いつも戻る」経験があるため止めにくい
ここで大事なのは、**「勝率」ではなく「最悪ケースに耐えられる設計か」**で判断することです。
チェック項目:最大ロット/最大段数/損切りの有無/稼働停止条件
マーチン系(またはマーチン要素を含む)EAを見極めるときは、最低限ここを確認してください。
- 最大ロット(MaxLot)があるか:上限なしは危険度が跳ね上がる
- 最大段数(MaxTrades / MaxOrders)があるか:無限ナンピンは要注意
- 損切りが実装されているか:SLがあっても“機能する条件”まで確認
- 稼働停止条件があるか:DD%・連敗・異常スプレッドなどで止まれるか
- ロット増加率(Multiplier)が過激すぎないか:2倍固定は特に膨張が速い
これらが曖昧なEAほど、平常時は良く見えても、異常時に耐えられません。
さらに詳しくマーチンゲールEAを知るには、こちらの記事を参考にしてください。
→マーチンゲールEAの仕組みと破綻リスク|安全な使い方は存在するのか?
グリッド(トラリピ型)の危険性|“回収できる前提”が崩れる瞬間
グリッド(トラリピ型)は、一定間隔(グリッド幅)で注文を並べ、価格が行ったり来たりする動き(レンジ)から利益を積み上げる考え方です。
うまくハマると、相場が小さく上下するだけでコツコツ利益が出るため、「安定して勝っている」ように見えやすいのが特徴です。
ただし、その安定は “いつか戻る”“戻れば回収できる” という前提に強く依存しています。
その前提が崩れた瞬間(=一方向に動き続けた瞬間)、含み損と必要証拠金が急増し、ロスカットや長期塩漬けに近づきます。
グリッドが強い相場・弱い相場(レンジ vs 一方向)
グリッドが得意なのは、次のような相場です。
- 値幅はあるが、上下に往復する(レンジ寄り)
- トレンドが出ても短く、すぐ戻る
- ボラが極端に跳ねない
逆に、弱いのはこのタイプです。
- 一方向に伸び続けるトレンド
- 戻りが浅いトレンド
- 急変動や窓で“飛ぶ”相場
グリッドは、相場の得意不得意がはっきりしているので、ここを理解せずに「勝ちやすい」だけで選ぶと危険です。
含み損の増え方を“値幅”で見る(本当の敵はボラ)
グリッド運用で本当に怖いのは、勝率よりも 含み損の増え方です。
グリッドは価格が逆行するほどポジションが増えやすく、含み損が「値幅に比例して」増えていきます。
ここで大事なのは、次の視点です。
- 何pips逆行したら、最大何ポジになるのか
- そのときの必要証拠金(維持率)は持つのか
- 戻りがどれだけ必要なのか(回収に必要な反発幅)
つまり、グリッドは「方向を当てる」より 最大逆行(=想定する値幅) の設計が生命線になります。
破綻しやすい設計(間隔が狭い・上限なし・損切りなし)
グリッドで破綻リスクが高くなる設計には、共通点があります。
- グリッド幅が狭すぎる:ポジションが増えるペースが速い
- 最大ポジ数がない(無限ナンピン):最悪ケースで制御不能
- 損切り(撤退)がない:戻らなければ終わらない
- 利確幅が小さすぎる:勝つたびの利益が薄く、事故に弱い
- 同方向だけで積む:トレンドが出たときの被害が大きい
“勝てているように見える期間”が長いほど、危険が見えにくくなる点も要注意です。
チェック項目:グリッド幅/最大ポジ数/平均回帰の根拠/資金余力
グリッド型EAを選ぶ・運用するなら、最低限この4つをチェックしてください。
- グリッド幅(GridStep):狭すぎないか、相場のボラに合っているか
- 最大ポジ数(MaxOrders):上限があり、最悪ケースを計算できるか
- 平均回帰の根拠:どの時間足・どんな条件で「戻る」を想定しているか
- 資金余力:最大逆行時に耐える資金設計(ロット・証拠金)になっているか
ここが曖昧だと、グリッドは「一見安定 → ある日急変で崩れる」という形になりやすいです。
グリッドEAについて詳しい解説はこちらの記事を参考にしてください。
→グリッドEAとは?トラリピ型の特徴・向いている相場・危険なパターン
無料のグリッドEAを多くバックテストし、比較している記事もあります。
→【無料グリッドEA28選】トラリピ型EAをすべて比較|MT4対応・最新バックテスト公開
ヘッジ・両建ては“万能の保険”じゃない(むしろ複雑化で事故る)
ヘッジ(両建て)は、「逆方向のポジションを持てば損失が止まる=安全そう」という印象を持たれがちです。
たしかに一時的に損益の変動を抑える効果はありますが、ヘッジは“損失を消す”のではなく、損失を固定して先送りする手段になりやすい点が重要です。
出口(解除条件)まで設計されていないヘッジは、結局「含み損を抱えたままポジションが増える」「コストだけが積み上がる」といった形で、破綻リスクをむしろ高めることがあります。
ヘッジで増えるコスト(スプレッド・スワップ・必要証拠金)
ヘッジは、見た目の損益が止まっても、次のコストが発生し続けます。
- スプレッド:建てた瞬間に往復コストが乗る(ポジションが多いほど増える)
- スワップ:両建てでも差し引きゼロにならないことがある(銘柄・口座・ブローカー仕様)
- 必要証拠金:ブローカーによっては両建てでも証拠金が必要(条件差が大きい)
つまり「損失が止まった=安全」ではなく、コストと資金拘束が進行している可能性があります。
特に長期化すると、解除の判断がどんどん難しくなります。
ロジック破綻:出口が無いヘッジ、解除条件が薄いヘッジ
ヘッジでありがちな“事故る設計”は、次の2つです。
- 出口が無い(解除条件が存在しない)
→ 相場が戻るまで待つだけになり、戻らなければ延々と抱える - 解除条件が薄い(解除しても再びヘッジが掛かる)
→ 解除→再ヘッジを繰り返して、コストだけが増える/ポジが膨らむ
ヘッジは「その場しのぎ」にはなっても、最終的にどう終わらせるかが決まっていないと、運用が泥沼化しやすいです。
両建てを使うなら最低限決めるルール(解除・停止・最大損失)
ヘッジ(両建て)を安全寄りに使うなら、最低限ここをルール化しておく必要があります。
- 解除ルール:何を条件に、どちらを切って、どう通常運用へ戻すのか
- 停止ルール:DD%/証拠金維持率/含み損額など、どこで完全停止するのか
- 最大損失ライン:最悪ケースで撤退するライン(“待てば戻る”は禁止)
- コスト把握:スワップと必要証拠金が、口座条件でどうなるかを事前確認
ヘッジは“万能の安全装置”ではなく、運用の難易度が上がる手法です。
初心者ほど「保険のつもりで使って、出口が作れずに長期化」しやすいので注意してください。
破綻リスクを数値で見える化する(DD / PF だけだと足りない)
EAを評価するとき、PF(プロフィットファクター)や勝率だけを見ると、危険度を見誤りやすくなります。
なぜなら、破綻につながるのは「勝てないEA」よりも、むしろ “普段は勝っているように見えるのに、負け方が致命的なEA” だからです。
ここでは、TOKYO-EAの記事内でも一貫して使えるように、最低限見るべき指標と「同じ数字でも危険度が違う理由」を整理します。
最低限見る指標:最大DD・リカバリー・取引回数・期待値
最低限、この4つはセットで確認するのがおすすめです。
- 最大DD(最大ドローダウン)
どれだけ資金が沈む可能性があるか。運用継続できるかの上限。 - リカバリーファクター(回復力)
ざっくり言えば「DDをどれくらいの効率で回復できているか」。
同じDDでも、回復が遅いEAは精神的にも資金的にも厳しくなります。 - 取引回数
回数が少ないと、結果が“たまたま”で良く見えている可能性があります。
特に「勝率が高い・PFが高いのに取引回数が少ない」タイプは要注意です。 - 期待値(1トレードあたりの平均損益)
「どれくらいの再現性で増えていくか」を見るための基礎。
期待値が小さいのに一撃損失が大きいEAは、長期で崩れやすい傾向があります。
※この記事内では、PFや勝率は“参考値”として扱い、危険度はDDと負け方の構造で判断する、という立て付けが安全です。
同じPFでも危険度が違う理由(“負け方の質”)
PFは「利益 ÷ 損失」の比率なので、数字だけ見ると優秀に見えます。
しかし、同じPFでも危険度が違うことがよくあります。
- 小さく勝って、たまに大きく負ける
→ PFは見栄えしやすいが、破綻リスクは高まりやすい(マーチン/グリッドで典型) - 勝ち負けの幅が比較的均等
→ PFが同程度でも、資金曲線が安定しやすい
ここで見るべきは、次のような“負け方の質”です。
- 損失が連鎖するときの膨らみ方(ロット増/ポジ増)
- 最大損失が平均損失の何倍か
- 一撃負けの頻度(まれでも致命傷なら要注意)
数字が綺麗でも、損失の形が「たまに大穴」だと、口座はいつか苦しくなる。
これがPFだけでは読み切れないポイントです。
破産確率(バルサラ等)を“運用判断”に使う考え方
破産確率(Risk of Ruin)は、ざっくり言えば「資金が尽きる確率」を考える枠組みです。
バルサラの破産確率などは、勝率や損益比、リスク量を前提にして“確率的に危ない運用かどうか”を判断するのに役立ちます。
ただし注意点もあります。
- 入力する前提(勝率・損益比)が崩れると、結果も崩れる
- マーチンやグリッドのように、損失が非線形に膨らむ設計だと単純モデルでは評価しにくい
- 「0%」と出ても“絶対安全”ではない(前提条件の範囲内の話)
なので本記事では、破産確率を「安全性の証明」ではなく、
ロットや最大損失ラインを決めるための判断材料として扱うのが現実的です。
安全寄りにする運用ルール(今日からできる)
EAの破綻は「手法のせい」だけで起きるわけではありません。
多くの場合、ロット・停止ルール・分散といった運用の基本が曖昧なまま走らせた結果、想定外の局面で耐えられなくなります。
ここでは、初心者でもそのまま運用ルールとして採用できるように、実務的な形でまとめます。
難しい最適化や高度な分析より先に、まずこの章のルールを“決めて守る”だけで事故率は大きく下がります。
ロットは固定より「資金量に応じた上限」を持つ
ロット固定は分かりやすい一方で、資金が増えても減っても同じリスク量で動くため、状況に合わなくなりやすいです。
そこでおすすめなのが「ロット上限」を先に決めておく運用です。
最低限、次の2つは決めてください。
- 最大ロット(口座全体の上限):これ以上は増やさない
- 最大保有(ポジ数 or 想定最大リスク)の上限:同時に抱える量を制限する
特にマーチン・グリッド系は、ロットやポジションが増える設計そのものがリスク源なので、
上限が無い=最悪ケースが計算できないという意味で危険度が跳ね上がります。
「勝てるロット」ではなく、“最悪ケースでも生き残るロット” を基準にするのが安全運用の第一歩です。
稼働停止ルール(DD% / 異常スプレッド / 指標時停止)
EA運用で最も大事なのは、実は「入る条件」より 止める条件 です。
止めどきがないEA運用は、どこかで必ず大きな損失に遭遇します。
停止ルールは、最低限この3系統で用意すると実用的です。
- DD%で停止:例)最大DDが○%に達したら停止
- 異常時停止:例)スプレッド急拡大/回線断/約定不良が疑われる時
- イベント停止:例)重要指標前後、週末クローズ前後は停止(必要なら)
停止は負けを確定させる行為なので心理的に難しいですが、
“止めない=破綻リスクを受け入れる”と同義です。
ルールとして先に決めておくと、迷いが減ります。
複数EA運用の分散ルール(相関・通貨・時間帯で分ける)
複数EAを動かしているのに一気に資金が減るケースの多くは、分散が効いていません。
本数を増やすだけでは分散にならず、**相関(同時に負ける可能性)**を下げる必要があります。
分散ルールの具体例は次の通りです。
- 通貨を分ける:USD偏重/JPY偏重を避ける
- 時間帯を分ける:ロンドン時間に集中させない
- ロジックを分ける:逆張りだらけ、スキャルだらけを避ける
- 同じ局面で同時に入らない設計:類似条件のEAを重ねない
「分散しているつもり」になりやすいポイントなので、
“同時に負ける条件が被っていないか”で点検するのがおすすめです。
フォワード(小額)→増額の手順テンプレ
いきなり本命ロットで回すのではなく、次の段階を踏むだけでも事故率が下がります。
- デモ or 小額で動作確認(約定・スプレッド耐性・停止ルールの作動)
- 小額フォワードで継続観察(最低でも一定期間 or 一定トレード数)
- 増額は段階的に(いきなり2倍3倍にしない)
- 問題が出たら“原因が特定できるまで”増額停止
バックテストは「可能性」ですが、フォワードは「現実の環境で動いた証拠」です。
特に執行やスプレッド影響を受けやすいEAほど、フォワードの価値が高くなります。
危険なEAを避けるチェックリスト(購入前・導入前)
EA運用でいちばん避けたいのは、「動かしてから危険に気づく」ことです。
特にマーチン・グリッド系は、平常時に成績が良く見えやすく、危険が表面化するのは“事故相場”のときになりがちです。
そこでこの章では、購入前・導入前にサクッと確認できるように、
販売文(説明)/パラメータ(設定)/バックテスト(根拠) の3方向から地雷を避けるチェックリストを用意します。
販売文で警戒すべき表現(“勝てる”だけ推しは危ない)
販売ページや紹介文で、次の傾向が強いEAは注意してください。
- 「勝率」「月利」など派手な数字だけ強調して、最大DDや損失の説明が薄い
- “放置で稼げる”“絶対”系の断言が多い(リスク説明が弱い)
- どんな相場に強いか・弱いかの説明がない(レンジ向き/トレンド弱い等)
- 想定外の局面(指標・窓・急変動)への言及がない
- 稼働停止条件や損切り方針が不明
大事なのは「勝てる理由」ではなく、“負けたときにどうなる設計か” が説明されているかです。
リスク説明が薄いEAほど、運用者が最悪ケースを想像できません。
設定項目から見抜く(MaxOrders / Recovery / Multiplier など)
EAの危険度は、パラメータ欄を見ればかなり推測できます。
特に次のような項目がある場合は、マーチン・グリッド(または近い動き)を疑い、慎重にチェックしてください。
- Multiplier / LotMultiplier / Martingale
→ ロット増の設定。倍率が大きいほど膨張が速い - MaxOrders / MaxTrades / MaxPositions
→ 上限がない、または大きすぎると最悪ケースが制御不能 - Recovery / RecoverLoss / CloseAllOnProfit
→ “損失回復ロジック”がある=含み損を抱えやすい可能性 - GridStep / Step / Distance
→ グリッド幅。狭いほどポジが増えるスピードが上がる - StopLoss が無い/異常に広い
→ 撤退が弱い可能性(「戻る前提」になりやすい) - MaxSpread が無い
→ スプレッド拡大時の事故が起きやすい
ポイントは「その設定がある=即アウト」ではなく、
上限・停止ルール・撤退条件がセットで設計されているかを見ることです。
バックテストの見方(期間・スプレッド条件・ティック品質・過剰最適化)
バックテストは、EAの性格を知る上で役立ちますが、見方を間違えると危険です。
最低限、次を確認してください。
- 期間が短すぎないか:相場局面(レンジ・トレンド・急変動)を含むほど良い
- スプレッド条件が現実的か:固定スプレッド前提の好成績は要注意
- ティック品質/データ条件が明記されているか:根拠が薄いと再現性が読めない
- 取引回数が十分か:少ないのにPFや勝率が高い場合は“たまたま”の可能性
- 極端に滑らかな右肩上がり:過剰最適化(カーブフィット)の疑い
- 最大DDが許容範囲か:成績が良くてもDDが深いと運用が続かない
そして最後に一番大事なのは、バックテスト結果を見てこう問うことです。
「このEAは、最悪ケースでどれくらい資金が沈み、どこで撤退する設計か?」
この答えが見えないEAほど、導入後に事故ります。
よくある質問(FAQ)
マーチンやグリッドは全部ダメ?
「全部ダメ」とは言い切れません。ただし、安全運用の難易度は高めです。
マーチンやグリッドは、平常時に成績が良く見えやすい一方で、相場急変やトレンド継続など“想定外”が来たときに損失が一気に膨らむ構造を持ちやすいからです。
使うなら最低限、
- 最大ロット/最大段数(最大ポジ数)の上限がある
- 損切り・撤退ルールが設計されている
- 異常時停止(スプレッド・指標など)ができる
- 最悪ケースの逆行幅に資金が耐えられる
この条件を満たしているかを、導入前に確認してください。
勝率が高いEAは安全?
安全とは限りません。むしろ勝率が高いほど危険が見えにくいことがあります。
小さな勝ちが続く一方で、たまに大きな負けが来る設計(マーチン/グリッド/含み損放置型など)だと、勝率は高くても一撃で資金が大きく減る可能性があります。
EAは勝率よりも、
- 最大DD
- 負け方の質(損失が膨らむ構造があるか)
- 撤退できる設計か(損切り・停止ルール)
を優先して見た方が、安全性の判断に近づきます。
EAの“安全なDD”の目安は?
一律の正解はありませんが、目安としては次の考え方が現実的です。
- DDが浅いほど精神的・資金的には運用しやすい
- DDが深いEAは「回復する前提」になりやすく、停止判断が難しくなる
- 許容DDは“数字”より「そのDDで継続できるか」で決める
実務では、許容DD%を先に決めて停止ルールに落とすのがおすすめです。
「DDが○%になったら止める」を決めておくと、想定外での破綻を避けやすくなります。
無料EAは危険?有料EAは安全?
価格だけでは判断できません。
無料でも堅実なEAはありますし、有料でもハイリスク設計のEAはあります。
判断材料としては、
- ロジックの説明があるか(得意・不得意が書かれているか)
- 最大DDや撤退ルールが明記されているか
- バックテストの条件が現実的か(スプレッドなど)
- パラメータに上限があるか(MaxOrders、MaxLotなど)
このあたりを見て“設計の誠実さ”を確認するのが大事です。
指標時にEAは止めた方がいい?
EAのタイプによりますが、短期足・スキャル系・スプレッド影響が大きいEAほど停止が有効です。
指標時はスプレッド拡大や滑りが起きやすく、損切りが想定より大きくなることもあります。
もし止めるなら、次のようにルール化すると運用しやすいです。
- 重要指標の前後は停止(例:発表前○分〜後○分)
- 週末クローズ前後は停止(窓対策)
- 異常スプレッド検知で自動停止
「都度判断」だと迷いが増えるので、停止条件は先に決めておくのがおすすめです。
まとめ|EAの破綻は“事前に避けられる事故”が多い
EA(自動売買)は便利な一方で、破綻リスクを正しく理解せずに動かすと、相場急変やトレンド継続などの“想定外”で大きな損失につながります。特にマーチンゲールやグリッド(トラリピ型)は、平常時の成績が良く見えやすい反面、損失が膨らむ構造を持ちやすいので注意が必要です。
この記事の要点は次の3つです。
- 破綻パターン(負け方)を先に知る:どんな局面で崩れるかが分かれば、危ないEA・危ない運用を避けやすくなる
- マーチン/グリッドは“回収前提”が崩れた瞬間にリスクが跳ねる:勝率やPFだけで安心せず、最大ロット・最大段数(最大ポジ数)・撤退ルールを必ず確認する
- 安全性は運用ルールで大きく改善できる:ロット上限、稼働停止ルール(DD%・異常スプレッド・指標時停止)、相関を意識した分散、段階的なフォワード運用が基本
次に読むなら、まずはEA運用の土台を固めるのがおすすめです。
「EAの選び方」を整理した記事や、「MT4の設定ミスで止まる事故」を防ぐチェック記事に目を通しておくと、破綻リスクをさらに下げられます。さらにスプレッドや約定の影響が気になる場合は、実測系の記事も合わせて確認しておくと安心です。
雇用統計時のスプレッドを徹底比較|海外FX6社を1分単位で実測
最後にもう一度だけ。EAで長く運用するコツは、勝ち方よりも “致命傷を避ける設計” を先に作ることです。まずは自分のEAが「どの破綻パターンに弱いか」を見つけ、停止ルールと上限設定から整えていきましょう。
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