最初に立場を明かします。当サイト(TOKYO-EA)は、MQL5マーケットで自社EAを販売している開発・出品の当事者です。競合が第三者の無料EAを検証する記事なので、褒めるにも貶すにも、どのデータで・どう回したかを全部開示して数字に語らせることにします。
取り上げるのは、MQL5マーケットで無料配布されている人気ゴールドEA 「XAUUSD 5 minute」(作者 Branislav Bridzik・レビュー164件/平均★4.43・2026年7月時点)。結論を先に言うと、今回は珍しく「全期間でプラスを維持した」EAでした。ただし手放しで勧める記事ではありません。最大ドローダウン35%という無視できないリスクも同時に開示します。
結論の要約
- 全期間(11年半)でプラスを維持——直近だけでなく2015年からの全期間で、口座は増えました(+約191%)。
- 勝率が安定——直近8ヶ月63%、5年53%、全期間52%と、期間を変えても勝率がほぼ崩れませんでした(多くのEAは長期で崩れます)。
- ただし最大ドローダウンは35%。増えても、途中で資金が3分の1以上へこむ場面があった計算です。ここを軽視してはいけません。
- 買いと売りの両方を出す平均回帰(逆張り)戦略。標準で安全網としての損切り(SL)が入っている点が、後述の粘り強さにつながっています。
検証したEAと「デフォルト設定」
XAUUSD 5 minute は、複数のサブシステムを束ねた平均回帰(相場が行き過ぎたら逆へ張る)型のゴールドEAです。名前は「5 minute」ですが、作者は説明文で「元はM5用だが、M15(15分足)の方がシグナルが明確」とし、推奨はM15。設定はロットとリスクだけに絞られており、ほぼそのまま使えます。今回は作者推奨のM15・デフォルトで回しました。主なデフォルト値は次の通りです(バックテストのレポートから転記)。
| 項目 | デフォルト値 |
|---|---|
| ロット | 0.01固定(リスク%運用はトグルでオフ) |
| 損切り(SL) | スイングSL 有効(安全網。相場が変わった時のみ作動) |
| 利確 | 固定TPでなく、複数システムのシグナルで自動決済 |
| 推奨足 | M15(名称は5分だが作者がM15推奨) |
標準で損切りが入っているのが、前回検証したトレンド型EA(損切りなし・全期間で赤字)との大きな違いです。
使用したヒストリカルデータ(全開示)
本検証の条件を全て開示します。誰でも同じ条件で再現できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| データ | Axiory公式ヒストリカルデータ(スタンダード口座・XAUUSD・1分足)※無料・公開DL |
| 期間 | 2015年1月〜2026年6月(約11年半) |
| 時間足 | M15(作者推奨) |
| スプレッド | 検証時に設定した固定30ポイント($0.30)。Axioryスタンダード口座のゴールド実勢(約2.8pips=$0.28)を参考にした値で、やや保守的 |
| 初期資金 | 100万円・0.01ロット固定 |
| モデル | 1分足OHLC |
| 設定 | すべてデフォルト(未変更) |
このEAは1分足データと実ティックの結果が大きくは乖離しませんでした。 直近約8ヶ月(実ティックが取れる2024年10月〜2025年5月)で突き合わせると、取引数410 vs 404、勝率61% vs 63%、PF1.96 vs 2.08と近い数字です(なお、この実ティック検証自体もモデリング品質61%=約39%は生成ティックによる補完で、完全な実ティック環境ではありません)。前回のトレンド型EAは同じ突合でPF2.64→1.36・勝率67%→41%と約2倍ズレて数字が甘く出たのに対し、このEAはその乖離が小さかった——つまり1分足データで作った長期バックテストも大きくは外していないだろう、という限定的な裏付けです。
バックテスト結果——期間を変えても崩れなかった
| 期間 | 純益(100万円比) | プロフィットファクター | 勝率 | 最大ドローダウン | 取引数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 直近8ヶ月(2024.10〜2025.05・実ティック) | +約60% | 2.08 | 63.1% | 9% | 404 |
| 5年(2021〜2026) | +132% | 1.38 | 52.9% | 19% | 2,939 |
| 全期間 11年半(2015〜2026) | +191% | 1.28 | 52.1% | 35% | 6,565 |

前回検証したトレンド型EAが「上げ相場では良いが全期間では負け越し(赤字)」だったのに対し、このEAは全期間でプラスを維持し、勝率も52〜63%で安定しています。プロフィットファクターも全期間で1を上回り(=勝ちの合計が負けの合計を上回る)、リカバリーファクターも高め=ドローダウンからの回復力があります。一方でシャープレシオは期間が伸びるほど低下し(8ヶ月5.29→5年1.31→全期間0.77)、リターンの滑らかさ・リスク調整後の効率という点では長期ほど見劣りします。買い・売りの両方を出す平均回帰+安全網の損切りという設計が、相場の方向に依存しすぎない粘り強さを生んでいると読めます。
見落としてはいけないリスク
「全期間プラス」だけを見て飛びつくのは危険です。正直な注意点を開示します。
- 最大ドローダウン35%(残高ベース。含み損まで含めると約36%)。資金が一時的に3分の1以上へこむ局面があった計算です。0.01ロット・100万円という小さめのロットでこの数字なので、ロットを上げるほどこの振れ幅は資金に対して大きくなります。耐えられる資金量とロット設計は各自の判断が必須です。
- 平均回帰の構造的リスク。逆張り型は「行き過ぎたら戻る」に賭けるため、一方向に走り続ける相場(強いトレンド)では戻りを待つ含み損が膨らみやすい性質があります。今回の11年半では損切りと両建て的な設計で耐えましたが、この構造リスク自体は消えません。
- バックテストは所詮バックテストです。スプレッドは固定30ポイントで計算しており、実際は指標発表などで一時的に開くため、実運用はこれより不利になり得ます。
- 良い数字も過去の結果であり、将来の成績を保証するものではありません。
無料版と有料版
XAUUSD 5 minute には有料の上位版「XAU Master EA」があり、システム数の追加や設定の調整幅の拡大が特徴とされています。無料版はいわば「設定を絞った完成品」で、本記事が検証したのは無料版のデフォルト設定です。有料版の成績を検証したものではありません。無料ツールで裾野を広げ収益は上位版で得るこの型自体は珍しくなく、当サイトも無料配布と有料商品を分けています。
よくある質問
Q. XAUUSD 5 minuteは「勝てるEA」ですか?
本検証の範囲では、全期間(11年半)でプラスを維持し、勝率も52〜63%で安定していました——多くのEAが長期で崩れる中では珍しい結果です。ただし最大ドローダウン35%があり、途中で資金が3分の1以上へこむ場面がありました。「増えたか」だけでなく「どれだけ耐える必要があるか」まで込みで判断すべきEAです。
Q. 平均回帰(逆張り)EAのリスクは何ですか?
平均回帰は「相場が行き過ぎたら戻る」に賭ける戦略なので、一方向に走り続ける強いトレンド相場では、戻りを待つ含み損が膨らみやすいのが構造的な弱点です。このEAは損切り(安全網)と両建て的な設計で今回の11年半を乗り切りましたが、この構造リスク自体は消えません。強トレンド時の挙動には注意が必要です。
Q. 無料版と有料版「XAU Master EA」はどう違いますか?
本記事が検証したのは無料版のデフォルト設定です。有料版のXAU Master EAは、システム数の追加・設定調整幅の拡大・リスク制御の強化などが差分とされています(有料版の成績は未検証)。無料版は「設定を絞った完成品」で、まずは素の挙動を本記事で把握するのに向いています。
まとめ
人気の無料ゴールドEA「XAUUSD 5 minute」をデフォルト設定のまま、Axioryの公開データで11年半バックテストした結果は、全期間でプラスを維持(+約191%・勝率52〜63%で安定)でした。1分足データと実ティックの結果が一致したため、この長期数字は比較的信頼できます。一方で最大ドローダウンは35%あり、平均回帰特有の構造リスクも残ります。
大事なのは「良いEA/悪いEA」の二択ではなく、どんなデータ・期間・設定で、どんなリスクと引き換えの数字なのかを確認することです。本記事はその条件を全て開示しました。同じ考え方で、ほかの無料ゴールドEAも横断でバックテストしています。
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