最初に立場を明かします。当サイト(TOKYO-EA)は、MQL5マーケットで自社EAを販売している開発・出品の当事者です。つまりこの記事は、第三者の無料EAを競合が検証するものです。だからこそ叩くのではなく、どのデータで・どう回したかを全部開示して、数字にそのまま語らせることにします。
取り上げるのは、MQL5マーケットで無料配布されているゴールドEA 「Supertrend G5」(作者 Van Minh Nguyen・レビュー39件/平均★4.85・2026年7月時点)。バックテストは所詮バックテストで、使ったヒストリカルデータ次第で結果は動きます。そこを隠さず、Axioryが公式に無料公開しているヒストリカルデータを使い、誰でも同じ条件で再現できる形で検証しました。
結論の要約
- 上げ相場(2024年後半〜2025年前半の約8ヶ月)だけを見ると好成績——ゴールドが歴史的に急騰した局面では、このEAはよく伸びました。
- しかし期間を延ばすほど成績が落ちる。5年で+49.5%(ただし最大ドローダウン31%)、11年半の全期間では純益マイナス(口座の約半分を失う計算)。
- つまり結果は相場の局面に強く依存します。短い良い期間も、長い悪い期間も、どちらも「その期間の結果」にすぎません。
- 無料版には損失を止める仕組みが標準で入っていません。これは有料版(Supertrend G5 Pro・199ドル)が売りにするリスク管理機能の裏返しでもあります(後述)。
検証したEAと「デフォルト設定」
Supertrend G5 は、その名の通り Supertrend 系のトレンド追随ロジックに移動平均線フィルターを組み合わせた、XAUUSD(ゴールド)・M5(5分足)専用のEAです。作者は製品ページで、デフォルト設定はすでに XAUUSD・M5 用に最適化済みで、そのまま使ってよいと説明しています(英語原文の大意。パラメータ調整が必要になるのは他の通貨ペアや暗号資産へ転用する場合、という位置づけ)。
そこで本検証は、作者が「そのまま使える」と言うXAUUSD・M5・デフォルト設定を、そのまま回しました。主なデフォルト値は次の通りです(バックテストのレポートから転記)。
| 項目 | デフォルト値 |
|---|---|
| 損切り(StopLoss) | 0=無効(標準でSLなし) |
| 利確(TakeProfit) | 5000ポイント |
| ロット | 0.01固定 |
| トレンドフィルター | EMA 50/200+上位足フィルター 有効 |
| 同時保有上限 | 3ポジション |
注目すべきは標準で損切りが無効な点です。トレンドが続く相場では含み益を伸ばせますが、逆行が続く相場では損失を止める仕組みがありません。ここが後半の結果に効いてきます。
使用したヒストリカルデータ(全開示)
バックテストの信頼性は「どのデータで回したか」に尽きます。本検証の条件を全て開示します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| データ | Axiory公式ヒストリカルデータ(スタンダード口座・XAUUSD・1分足)※無料・公開DL |
| 期間 | 2015年1月〜2026年6月(約11年半・約407万本のM1データ) |
| スプレッド | 検証時に設定した固定30ポイント($0.30)。Axioryスタンダード口座のゴールド実勢(約2.8pips=$0.28)を参考にした値で、やや保守的 |
| 初期資金 | 100万円・0.01ロット固定 |
| モデル | 1分足OHLC(当サイトが自社EAの長期公式バックテストで使うのと同じ方式) |
| 設定 | すべてデフォルト(未変更) |
補足として、Axioryの実ティックデータが存在する直近約8ヶ月(2024年10月〜2025年5月)については、1分足データだけでなく実ティックでも回して突き合わせました(後述の注意点参照)。
バックテスト結果——期間で結果が反転する
同じEA・同じデフォルト設定でも、切り取る期間で結果はここまで変わりました。
| 期間 | 純益(100万円比) | プロフィットファクター | 勝率 | 最大ドローダウン | 取引数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 直近8ヶ月(2024.10〜2025.05) | +約20% | 2.64 | 66.7% | 7% | 75 |
| 5年(2021〜2026) | +49.5% | 1.58 | 47.4% | 31% | 460 |
| 全期間 11年半(2015〜2026) | −約50%(損失) | 0.64 | 30.1% | 50% | 1,085 |

読み方はシンプルです。2024年後半〜2025年前半の8ヶ月や、直近5年だけを見れば「勝てるEA」に見えます。ゴールドが大きく上昇したこの数年は、トレンド追随のこのEAにとって追い風でした。ところが2015〜2020年のレンジ・下落を含む全期間で回すと、プロフィットファクターは0.64(1を割る=負け越し)、最大ドローダウンは50%に達し、11年半トータルでは口座の約半分を失う計算になりました。
これは「Supertrend G5 が悪いEA」という話ではありません。トレンド追随型EAは、トレンドが出る相場では強く、レンジや逆行が続く相場では弱い——その素直な現れです。標準で損切りが無い設定は、追い風のときは有利に、向かい風のときは不利に働きます。
無料版と有料版(Pro)の設計差
ここは公平のために書いておきます。Supertrend G5 には有料の上位版「Supertrend G5 Pro」(199ドル)があり、Pro版は「日次損失上限」「口座損失上限」「トレンド反転保護」「動的ロット」といったリスク管理機能を売りにしています。
つまり今回検出した「損切りが無く、悪い相場でドローダウンが膨らむ」挙動は、まさにPro版が有料で解決すると謳っている部分です。無料版はいわば入口版で、リスク管理は上位版の役割——という設計思想が読み取れます。無料ツールで裾野を広げ、収益は上位版で得るこの型自体は、珍しいものではありません(当サイトも無料配布と有料商品を分けています)。だからこそ、無料版をそのまま長期運用したときの姿を知っておくことに意味があります。なお本記事が検証したのは無料版のデフォルト設定であり、Pro版そのものの成績を検証したものではありません。
この検証の注意点(正直な限界)
数字を鵜呑みにしないために、限界も開示します。
- バックテストは所詮バックテストです。ここで使ったのは1分足バーから再構成したデータで、実際のティックの動きとは差が出ます。実際、この8ヶ月(2024年10月〜2025年5月)を実ティックで回すと勝率は41%・PF1.36と、1分足データ(勝率67%・PF2.64)より辛い数字になりました(純益はどちらもプラス圏でしたが、勝率とPFという“勝ちの安定性”を示す指標が明確に落ちました。なお、この実ティック検証のモデリング品質は61%=残り約39%は生成ティックで補完しており、完全な実ティック環境ではありません)。1分足データは実ティックより成績が良く出やすい傾向があるため、上表の勝率・PFはやや甘めに見ておくのが安全です。
- スプレッドは固定30ポイントで計算しています。実際のスプレッドは指標発表などで一時的に大きく開くため、実運用はこれより不利になり得ます。
- ロット0.01・資金100万円という条件での数字です。ドローダウンの「%」は資金量とロットの取り方で印象が変わります。
- 良い期間も期間依存です。2024年後半〜2025年前半の好成績は「たまたま歴史的な上げ相場だった」面が大きく、悪い11年の数字と同じくらい、期間の切り取り方に左右されています。
- 本検証は過去データの再現であり、将来の成績を保証するものではありません。
よくある質問
Q. 結局、Supertrend G5は「勝てるEA」ですか?
「どの期間で見るか」で答えが変わります。直近5年やゴールドの上げ相場だけを切り取ればプラス、2015年からの全期間で回すと負け越しでした。断定的に「勝てる/勝てない」と言えるEAではなく、相場の局面に強く依存するトレンド追随型、というのが本検証での実像です。
Q. 無料版と有料版(Pro・199ドル)、どちらを使うべき?
本記事が検証したのは無料版のデフォルト設定で、Pro版そのものの成績は検証していません。無料版で確認された「損切りがなく、逆行相場でドローダウンが膨らむ」挙動は、Pro版が有料で解決すると謳う機能(日次・口座損失上限、トレンド反転保護など)の裏返しです。まず無料版の素の挙動を本記事で把握したうえで、リスク管理を上位版に任せるかは各自の判断になります。
Q. デフォルトのまま使っても大丈夫ですか?
作者は「XAUUSD・M5ならデフォルトのまま使える」としており、本検証もその設定で回しました。ただし標準で損切りが無効なので、そのまま長期運用すると本記事のような大きなドローダウンが起こり得ます。使う場合は、少なくとも損失の上限(損切りや口座単位のストップ)と、資金に対して十分小さいロットを自分で決めておくのが安全です。
まとめ
無料ゴールドEA「Supertrend G5」をデフォルト設定のまま、Axioryの公開データで11年半バックテストした結果は、期間で大きく揺れ、全期間では負け越し・最大ドローダウン50%でした。上げ相場の期間だけを見て判断すると、実像を見誤ります。
大事なのは「このEAは良い/悪い」の二択ではなく、どんなデータ・どんな期間・どんな設定で出た数字なのかを確認することです。本記事はその条件を全て開示しました。同じ考え方で、ほかの無料ゴールドEAも横断でバックテストしています。
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